工房では、製材した板を最低二年間、自然乾燥させてから使います。「なぜそんなに待つのか」と聞かれることがあります。答えは単純で、乾燥が不十分な木を使うと、家具が完成した後に動くからです。反る、割れる、引き出しが開かなくなる。それを防ぐために、待ちます。
木が動く理由 ¶
木は生きているとき、細胞の中に水分を含んでいます。製材すると、その水分が蒸発し始めます。水分が抜けると木は収縮します。問題は、収縮の量が方向によって違うことです。木目に沿った方向と、木目を横切る方向では、収縮率が二倍以上違います。この差が、反りや割れの原因です。
自然乾燥と人工乾燥の違い ¶
人工乾燥(乾燥窯)を使えば、数週間で含水率を下げられます。ただし、急激に乾燥させると、表面と内部の収縮差が大きくなり、内部に応力が残ります。この応力が、後から家具を作ったときに解放されて動く原因になります。自然乾燥は時間がかかりますが、木全体がゆっくり均一に乾くため、応力が残りにくい。
2018年の失敗から学んだこと ¶
2018年の夏、納期を詰めすぎて、乾燥期間が一年三ヶ月しかなかった板でテーブルを作りました。納品から三ヶ月後、お客様から「天板が反っている」と連絡がありました。含水率を確認したら、まだ18%ありました。目標の15%以下に達していなかった。交換対応をしましたが、あの経験が今の「最低二年間」という基準を作りました。
乾燥棚の管理 ¶
工房の乾燥棚は、風通しの良い場所に設置しています。板と板の間に桟木を挟んで、空気が通るようにしています。夏は湿度が高く、板がわずかに動く季節です。冬は乾燥しすぎて割れることがある。季節ごとに棚の状態を確認し、割れが入り始めた板には蜜蝋を塗って保護します。
木材の乾燥は、家具作りで最も地味で最も大切な工程です。待つことが仕事の一部です。急いで作った家具は、必ずどこかで嘘をつきます。それを2018年の夏に学びました。