カエデという木は、家具材としてあまり一般的ではないかもしれません。ナラやウォールナットに比べると、名前を聞く機会が少ない。でも、長野県内の山に自生するイタヤカエデは、家具材として非常に優れた性質を持っています。工房を始めた2011年から主力材として使い続けてきた理由を、具体的にお伝えします。

硬さと加工性のバランス

イタヤカエデはモース硬度で言うと、ナラよりやや硬い部類に入ります。傷がつきにくく、ダイニングテーブルのように毎日使う家具に向いています。一方で、鑿や鉋での加工は比較的素直で、繊維が均一なため、蟻継ぎのような精密な継ぎ手を切るときも割れにくい。硬すぎず、柔らかすぎない。その中間にある木です。

木目と色の変化

イタヤカエデの木目は、ナラのような大きな虎斑はありません。細かく均一な木目が続くため、表面が落ち着いた印象になります。色は最初クリーム色に近い白ですが、オイル仕上げをして光にさらされると、一年ほどで温かみのある黄みがかった色に変わります。この変化を「育つ」と表現するお客様が多いです。

乾燥に時間がかかる

カエデは乾燥が難しい樹種です。急いで乾燥させると、表面だけが先に乾いて内部との収縮差が生じ、割れや反りが起きます。工房では製材後に最低二年間、自然乾燥させてから使います。含水率が15%以下になったことを確認してから制作を始めます。この待ち時間が、カエデ材を使う上で最も大切な工程です。

オイル仕上げとの相性

カエデはウレタン塗装よりもオイル仕上げに向いています。木の密度が高いため、オイルの吸い込みが少なく、塗りすぎるとべたつきます。工房では亜麻仁油ベースのオイルを薄く三回塗り重ね、一回ごとに丸一日乾燥させます。仕上がりは表面に膜を張らず、木の手触りがそのまま残ります。

イタヤカエデは、長野の山に普通に生えている木です。遠くから運んでくる必要がない。地元の木を地元の工房で家具にする。それが一番自然なことだと思っています。現在の在庫作品や、オーダーのご相談はお気軽にどうぞ。